【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ― お中元編 ―

2025年7月29日

吾輩は猫である ― お中元編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。
だがこの時期になると、玄関のチャイムがよく鳴る。

「お届けものでーす!」
飼い主がはんこを持って走る先には、
丁寧に梱包された箱
大抵、果物かジュースか、そうめんである。

――そう、それが「お中元」というやつだ。

飼い主が言うには、
「お世話になった人に季節のご挨拶をする文化」らしい。
吾輩としては、
“礼”より“缶詰”を送ってくれた方がありがたいのだが。

箱を開ける音には敏感だ。
とりわけ紙の音。ビニールのこすれる感触。
吾輩の狩猟本能が反応してしまう。

「だめだよ〜これは人間用だからね」と
飼い主は笑うが、
贈り物の中には、猫が開けていい“隙”が必ずある。

お中元 開封担当 吾輩なり

それにしても、
「暑中お見舞い申し上げます」とか
「ご自愛くださいませ」とか、
遠回しな言い方ばかりで、
肝心な中身がなかなか現れない。

猫ならこうだ。
「いつもありがとニャ。ほれ、煮干しな」
たった十音で済む。

でもまあ、
人間たちが贈ったり贈られたりして、
笑っているのは悪くない。

吾輩は箱に飛び込み、
今日も「お中元便の緩衝材チェック」を担当している。
それもひとつの、夏の役割かもしれぬ。


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gonta

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