吾輩は猫である。名はまだない。 雨の日、飼い主が長靴を履いて出かける。ごつく、重く、足音がいつもと違う。その様子を見て、吾輩はふと思った。――猫って、長靴履けるのだろうか。 結論から言うと、履けない。物理的には、入るかもしれぬ。だが、猫の足は地面と会話している。濡れ具合、冷たさ、微かな振動。それらを遮る靴は、猫にとって世界を閉ざすものだ。 人は守るために履く。猫は感じるために裸足でいる。そこが違う。 長靴を履けば、水たまりは怖くない。だが、水たまりが何者か分からなくなる。猫はそれを好まない。 吾輩は雨音を ...