吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 加冠の儀 編 ―

2025年9月8日

吾輩は猫である ― 加冠の儀 編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。

今日は特別な日。
朝から町は静まり返り、人々の装いは一段と改まっていた。
遠くから雅楽の調べが響き、
空気そのものが神聖な色を帯びている。

吾輩は群衆の後ろからそっと覗いた。
そこには、若き者が冠をいただく厳粛な儀式――
「加冠の儀」が行われていた。

冠はただの飾りではない。
それは新たな責任の象徴であり、
未来を背負う者に与えられる重みそのもの。
人々は深々と頭を垂れ、
その瞬間を見守っていた。

吾輩は毛並みを整え、しっぽを静かに下ろした。
軽やかに跳ねる心を抑え、
ただ厳かな空気に身を委ねる。
この光景を前にしては、
名もなき猫でさえ背筋が伸びるのだ。

儀式が終わると、陽の光が差し込み、
冠を戴いたその者を包み込んだ。
人々の拍手の音は大地に響き、
吾輩はただ深く瞬きを返した。
尊ぶべき時を共にした証として。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが今日、この大切な瞬間に立ち会えたことを、
胸いっぱいに誇りとする。

冠戴き 光まといて 世を照らす


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gonta

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