吾輩は猫である。名はまだない。
朝から雨が降り続いていた。
軒先のしずくは途切れることなく落ち、
庭の土は黒く濡れて、
花々は肩をすくめているように見える。
吾輩は窓辺で丸くなり、
ただ静かにその音を聞いていた。
ときに雨は心を沈める。
けれど同時に、
大地を潤し、新しい芽を育てる恵みでもある。
やがて昼を過ぎたころ、
雲間から光が差した。
濡れた木々の葉が一斉にきらめき、
空には淡い虹がかかった。
雨は終わり、晴れが訪れたのだ。
吾輩はふと思う。
猫生も人生もまた、この空のようであろう。
降り続く雨に耐えるときがあり、
その先には必ず光が待っている。
悲しみや迷いも、やがては未来を照らす養分となるのだ。
吾輩は猫である。名はまだない。
だが願わくは――
人も猫も、雨のち晴れのように
移ろいを受け入れ、強くしなやかに歩めますように。
雨上がり 毛並みに光る 虹の色