【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ― 飛行機で帰省 編―

2025年10月27日

吾輩は猫である ― 飛行機で帰省 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

年の瀬、飼い主が大きなスーツケースを引きずりながら言った。
「さあ、実家に帰るよ」
そう、吾輩も一緒に“帰省”するのである。

まずは空港へ向かうバス。
だが、乗り継ぎが悪い。
一本逃せば次は三十分後、
吾輩のキャリーの中は早くも蒸し風呂状態だ。
飼い主は焦り、スマホで時刻表をにらみつけている。
吾輩はただ無言で見守る――
猫は慌てぬ。慌てても、バスは早く来ぬのだ。

ようやく空港に着き、飛行機のエンジン音が唸る。
離陸の瞬間、
吾輩の体はふわりと浮き、
窓の外に小さく街が遠ざかっていく。
あの下に、いつもの公園もあるのだろう。

機内では飼い主が小声でつぶやいた。
「早く帰って母のごはん食べたいな」
吾輩は小さく鳴いた。
帰る場所がある――それは、人にも猫にも幸福なことだ。

到着後、地方空港でまたバスを待つ。
冷たい風が吹き抜け、乗り継ぎに間に合わず、
飼い主は肩を落とした。
けれども夜空には星が瞬き、
潮の匂いがふと鼻をかすめた。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、遠くても帰る家があることを、
今夜あらためて思い出した。

乗り継ぎに 風の手招く 帰り道


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gonta

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