吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ―猫の口述試験 編―

2025年11月30日

吾輩は猫である ―猫の口述試験 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

今日、吾輩は試験会場なる場所に連れてこられた。
どうやら「口述試験」なる難関に挑むらしい。
――なぜ猫が?と聞きたいが、
飼い主曰く「君ならできる」。
根拠のない自信ほど恐ろしいものはない。

静かな部屋に案内され、
試験官が三名、真剣な顔で座っている。
「それでは、あなたの経験を聞かせてください」
吾輩は思った。
――経験とは、窓辺で日向ぼっこした回数のことか?

まず聞かれたのは、
「あなたが普段、どのようにリスクを管理していますか?」
吾輩は胸を張って答えた。
「見知らぬ紙袋には近づかない。
窓が開いていれば、飛び出さない。
飼い主の足元には、極力絡まない。」
試験官は深くうなずいた。手応えがある。

続けて問われた。
「チームワークを発揮した経験は?」
吾輩は即答した。
「飼い主が落ち込んでいたとき、
そっと膝に乗ったことである。」
これは完璧な回答であった。

最後にこう聞かれた。
「あなたにとって“信頼”とは何ですか?」
吾輩はしばし沈黙したのち、
「お腹を見せられる相手です」と答えた。
試験官の表情が和らいだ。
どうやら“真実の答え”は言葉より姿に宿るらしい。

試験後、飼い主が走り寄ってきた。
「どうだった?」
吾輩は小さく鳴いた。
全力を尽くした。
それで良いのだ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが今日、
“伝える”という行為の尊さを学んだ。

問われれば 心で返す 春の声


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gonta

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