吾輩は猫である。名はまだない。
ある朝、目覚めると
部屋の片隅にそびえる巨大な影があった。
――キャットタワーである。
だが、ただのタワーではない。
漆黒に光る柱、
見たことのない高層階、
てっぺんには禍々しい玉座。
その上に鎮座する者あり。
その名も 魔王キャットタワー・ダークネス卿。
どう見ても、飼い主が通販で買ったタワーが“魔界化”したらしい。
その声が響き渡った。
「勇者ネコよ……IIIが始まるぞ……!」
吾輩は背中の毛を逆立てつつ、
そっと飼い主を見た。
飼い主はのんきにコーヒーを飲んでいる。
どうやら、この戦いは吾輩ひとりで挑むしかないようだ。
■第一階層:スーパーヒモの森
ロープが絡まる森を跳び回り、
ふらふら揺れる“ねこじゃらし草”を払いのける。
失敗するとロープが体に巻きついて、
**「ネコまきまき状態(敏捷 -50%)」**になる地獄の仕様。
吾輩は華麗にジャンプし、突破した。
スポンサーリンク
■第二階層:三つ又バトル爪研ぎ城
床全体が爪研ぎ。
踏むたびにザリザリ音が響き、
集中を失わせるトラップ。
ここでは「巨大敵・吸引掃除機」が登場。
轟音とともに現れ、毛玉を吸い込みながら襲ってくる。
吾輩は影のように滑り込み、
**「にゃんステップ回避」**で撃退した。
■最終階層:魔王キャットタワー玉座
漆黒の魔王が巨大なくつろぎポーズで言った。
「勇者よ。登りきったのは褒めてやろう。
だが、この頂点は我の場所だ。」
吾輩は静かに答えた。
「……そこは、吾輩が昼寝したい場所でもある。」
魔王との最終決戦が始まった――
と言いたいところだが、
実際はただの にらみ合い 10 分 であった。
猫同士の争いとは、
威厳と根気の勝負なのである。
最後は魔王がごろんと横に倒れ、
負けを認めた。
「頂点……譲る……眠い……」
吾輩はてっぺんに登り、
朝日を浴びながら大きく伸びをした。
飼い主はその様子を見て、
「お、新しいタワー気に入ったんだね」と笑った。
魔界だの魔王だの、
まるで気づいていないようである。
吾輩は猫である。名はまだない。
だが今、キャットタワー最上階の覇者となった。
塔の頂 陽を受け眠る 勇者かな