【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―人たらし 編―

2025年12月22日

吾輩は猫である ―人たらし 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

飼い主はよく言われる。
「あなた、ほんと人たらしだよね」と。
褒めているのか、呆れているのかは分からぬが、
そのたびに吾輩は思う。
――本当の人たらしは、ここにいる、と。

吾輩は特別なことは何もしていない。
必要以上に鳴かず、
欲しいときだけ近づき、
撫でられたいときには、
ほんの少しだけ背中を差し出す。

それだけで、人は勝手に心を許す。

宅配の人、来客、初対面の獣医殿。
誰に対しても吾輩は同じ態度だ。
警戒しすぎず、
愛想を振りまきすぎず、
ただ「ここにいる」。

すると人は言う。
「この子、不思議と落ち着くね」

人たらしとは、
相手を操作することではない。
期待を押しつけず、
評価を求めず、
そのままで居続けることなのだ。

夜、飼い主が疲れた顔で帰ってきた。
吾輩は何も言わず、
膝に乗り、ただ温度を分けた。

飼い主は深く息を吐き、
「君がいると救われるよ」と呟いた。
それで十分だ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、人の心がほどける瞬間を、
吾輩はよく知っている。

寄り添えば 言葉いらずの 人たらし


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gonta

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