【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫のレントゲン―動かないで― 編―

2026年1月13日

吾輩は猫である ―猫のレントゲン―動かないで― 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

今日は病院である。
白くて、静かで、
なにやら機械の音がする場所だ。
診察のあと、獣医殿が言った。
「レントゲンを撮りましょう。
 ――動かないでくださいね。」

……それが一番難しい。

台の上は冷たく、
姿勢は不自然。
吾輩は思う。
なぜ猫に“動くな”を求めるのか。
それは、
風吹けば揺れる生き物に
風を止めろと言うようなものだ。

だが、飼い主の声が聞こえた。
「大丈夫だよ。すぐ終わるから。」
その一言で、
胸の奥がすっと落ち着いた。

機械が近づき、
「はい、いきます。動かないでー。」
吾輩は全身の力を抜き、
石像になったつもりで目を閉じた。
――今だけは、猫であることを忘れよう。

一瞬の静寂。
カシャ、という音。
「はい、終わりました。」

終わった。
吾輩は誇らしげに、
小さく鼻を鳴らした。
動かなかった。
やればできる。

結果は問題なし。
飼い主は深く息を吐き、
吾輩を抱き上げた。
「よく頑張ったね。」
その言葉で、
検査の冷たさはすべて消えた。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが今日、
“動かない勇気”というものを知った。

動かぬも 信じるための 猫の技


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gonta

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