【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―かぎ尻尾 編―

2026年1月19日

吾輩は猫である ―かぎ尻尾 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

吾輩の尻尾は、まっすぐではない。
途中で、くい、と折れ、
小さな鍵のような形をしている。
人はそれを「かぎ尻尾」と呼ぶ。

子猫の頃、
それを見て心配する人もいた。
「大丈夫? 曲がってるよ。」
だが、吾輩にとっては
最初からこの形だった。
不自由も、違和感もない。

むしろ、この尻尾は役に立つ。
狭い場所で体の向きを伝え、
気分を少しだけ強く表現し、
ときには、
人の指を引っかけて引き留める。

昔から言われているらしい。
かぎ尻尾の猫は、
幸運を引っかけてくる、と。
吾輩は信じても信じなくてもよい。
だが確かに、
この家には笑い声が多い。

まっすぐでなくてもいい。
曲がっていても、
ちゃんとバランスは取れる。
大切なのは、
どこへ伸びているかだ。

飼い主が言う。
「その尻尾、かわいいね。」
吾輩は少しだけ誇らしく、
しっぽの先を揺らした。

吾輩は猫である。名はまだない。
だがこのかぎ尻尾で、
今日も小さな幸せを
そっと引っかけている。

曲がり尾で 福を手繰り寄せ 昼寝かな


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gonta

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