【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫目線カメラ 編―

2026年1月26日

吾輩は猫である ―猫目線カメラ 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

ある日、飼い主が床に小さな機械を置いた。
「猫目線カメラ、試してみよう。」
どうやら吾輩の首元に装着し、
世界を“猫の高さ”で撮るらしい。

歩き出すと、
人間の足がやけに大きい。
椅子の脚は森の幹のようで、
ソファの下は立派な洞穴だ。
人間が見落としている通路が、
この家にはいくつもある。

匂いが先に来る。
画面には映らぬが、
床の角、
窓辺の風、
昨日の記憶。
猫目線とは、
視界だけでなく、
感覚の総和なのだ。

飼い主が映像を見て驚いた。
「こんなとこ、通ってたんだ。」
吾輩は思う。
世界は変わっていない。
ただ、
見る高さが違うだけだ。

人間は上から見て判断し、
猫は横から見て理解する。
どちらが正しいという話ではない。
ただ、
低い位置には、
見逃されがちな真実が多い。

撮影が終わり、
カメラは外された。
吾輩はいつもの場所に戻る。
だが、
飼い主の歩き方が少し変わった。
床を見る時間が、
少しだけ増えた。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが今日、
視点を変えるだけで、
世界はずいぶん優しくなると知った。

低き目で 世界を映す 猫の真


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gonta

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