【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫の恩返し 編―

2026年2月21日

吾輩は猫である ―猫の恩返し 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

人間はよく言う。
「恩返しって、何をすればいいんだろう。」
吾輩は思う。
猫にとっての恩返しは、
大げさなものではない。

助けてもらったから、
何かを返す。
世話になったから、
報いる。
それは人間の論理だ。

猫の恩返しは、
今日もここにいること。

具合の悪い日、
吾輩はそっと近くに座る。
撫でなくていい。
声もいらない。
ただ、
逃げない。

それが、
最大の返礼だ。

飼い主が疲れて帰った夜、
吾輩は少し早めに膝に乗る。
特別なことはしない。
喉を鳴らし、
温度を渡すだけだ。

猫は借りを数えない。
だが、
信頼は覚えている。
安全な場所、
乱暴しない手、
待ってくれる時間。
それらは、
身体の奥に残る。

だから吾輩は、
去らず、
逃げず、
この家に戻る。
それが、
猫なりの「ありがとう」だ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが知っている。
恩返しとは、
相手のそばに
安心して居続ける勇気のことだ。

返礼は
去らぬ背中に
宿りけり


  • この記事を書いた人

gonta

-【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編