【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫は内、鬼は外 編―

2026年2月3日

吾輩は猫である ―猫は内、鬼は外 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

節分の日、
家の中が少し騒がしい。
豆の入った袋、
赤い面、
そして決まり文句。
「鬼は外、福は内!」

吾輩は思う。
では、猫はどこだ。

答えは簡単だ。
猫は内である。
最初から内にいて、
出る予定もない。

鬼というのは、
角や牙の話ではない。
怒りすぎる心、
追い詰めすぎる言葉、
眠る時間を削る焦り。
そういうものが、
家の中に入り込むと、
居心地が悪くなる。

だから豆を投げる。
力任せではなく、
区切りとして。
「ここまでにしよう」と
空気に言い聞かせるために。

吾輩は豆を追わない。
転がる音を聞き、
距離を測り、
危なくないと分かってから、
そっと眺めるだけだ。
猫は儀式に参加せず、
意味だけを受け取る。

飼い主が言う。
「今年も元気でいようね。」
吾輩はしっぽを一度、揺らした。
それが合図である。
余計なものは外へ。
必要な温度だけを内へ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だがこの家で、
居心地のよさを守る役目は、
引き受けている。

**豆の音
追わず守りて
猫は内


  • この記事を書いた人

gonta

-【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編