吾輩は猫である。名はまだない。
雪山は、
静かなようで忙しい。
白は音を吸い、
人の欲だけが、
やけに目立つ。
人間は、
板を履き、
空を回り、
回転数を数える。
七回転できるかどうかが、
重要らしい。
吾輩は思う。
猫がスノボをやったら、
七回転できるだろうかと。
結論から言えば、
できる。
ただし、
やらない。
猫の体は軽く、
重心は低く、
回転には向いている。
理屈の上では、
七回転も不可能ではない。
だが、
猫は数を目的にしない。
着地が見えぬ回転は、
跳ばぬ。
拍手のための空中散歩に、
命は賭けぬ。
猫が跳ぶのは、
必要な分だけだ。
高くではなく、
確実に。
多くではなく、
戻れる範囲で。
人間は言う。
「挑戦が大事だ」と。
それも一理ある。
だが、
生き延びる者の挑戦は、
成功率から逆算される。
雪面に残るのは、
回転数ではなく、
無事に降りた跡だ。
それを、
猫はよく知っている。
吾輩は猫である。
七回転はできる。
だが、
一回で降りる。
無事に戻ることこそ、
最も高度な技だからだ。
七回転
降りて歩ける
方を選ぶ