【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫と職人 編―

2026年3月6日

吾輩は猫である ―猫と職人 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

朝の工房は、
音が少ない。
道具が並び、
木の匂いが満ち、
まだ何も始まっていない。

やがて、
一つの音が鳴る。
削る音。
打つ音。
測る音。

人間は、
その者を職人と呼ぶ。

多くを語らぬ。
説明も少ない。
だが、
手は迷わない。

吾輩は、
作業台の端に座る。
邪魔はしない。
ただ、
見ている。

職人は、
速さを競わぬ。
派手さも求めぬ。
同じ動きを、
何度も繰り返す。

繰り返しは、
退屈ではない。
精度を上げるための、
静かな蓄積である。

刃物は研がれ、
木は整い、
形が現れる。
偶然ではない。
積み重ねが、
形になる。

吾輩は思う。
本物とは、
説明できぬ安心感だと。

職人の背中は、
大きくもなく、
誇らしげでもない。
ただ、
揺れない。

夕暮れ、
工房はまた静かになる。
出来上がった物は、
語らずとも語る。

吾輩は猫である。
道具は持たぬ。
だが、
磨き続ける姿勢は知っている。
技とは、
見えぬ時間の結晶である。


削る音
背中で語る
年輪よ


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gonta

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