吾輩は猫である。
名前はまだない。
机の上に、
一冊の雑誌が置かれている。
表紙は静かで、
声を張らぬ。
人間はそれを、
『致知』と呼ぶ。
発行しているのは、
致知出版社
というらしい。
ページをめくる音は、
軽い。
だが、
書いてある言葉は重い。
成功よりも、
生き方。
効率よりも、
徳。
流行よりも、
積み重ね。
吾輩は、
膝の上に座る。
読んでいるのは人間だが、
考えているのは、
どちらだろう。
致知とは、
知に至ると書く。
だが、
知ることと、
至ることは違う。
読むだけでは足りぬ。
実践して、
磨き、
失敗し、
戻る。
その往復の中で、
少しずつ近づく。
猫は、
語らぬが、
続ける。
毎日同じ場所に座り、
同じ時間に目を閉じる。
習慣こそ、
最も地味な修養である。
雑誌は閉じられ、
部屋は静かになる。
だが、
言葉は残る。
吾輩は猫である。
本は書かぬ。
だが、
日々の姿勢は持っている。
致知とは、
読むことではなく、
整えて続けることだ。
読むよりも
座る背中に
知は宿る