吾輩は猫である。
名前はまだない。
朝の空気が澄み、
人の流れが一方向へ向かう。
旗が小さく揺れ、
声は抑えめに重なる。
人間はこれを、
一般参賀と呼ぶ。
集まる理由は、
言葉よりも所作にある。
遠くを見ること、
立ち止まること、
同じ方向を向くこと。
吾輩は、
少し離れた場所からそれを見る。
近づきすぎぬ。
だが、
背を向けもしない。
姿は遠く、
言葉は短い。
それでも、
人は満ち足りた顔で帰る。
見えたからではない。
集ったからだ。
祝いとは、
騒ぐことではない。
確認することだ。
続いているものを、
今年も続けるという意思を。
旗は振られ、
やがて下ろされる。
人波は静かに解け、
街は日常へ戻る。
吾輩は思う。
象徴とは、
大きく動くことではなく、
そこに在り続けることだと。
吾輩は猫である。
参賀はせぬ。
だが、
遠くから揺れぬ姿を見る。
続くということは、
集まり、
また散ることなのだ。
旗揺れて
集う静けさ
年は明く