吾輩は猫である。
名前はまだない。
最近、
家の中に猫が増えた。
理由は知らぬ。
だが、
皿は増え、
寝床も増えた。
人間はこれを、
シェアハウスと呼ぶらしい。
猫は、
群れぬ。
だが、
共にいることはある。
距離を保ち、
場所を分け、
干渉しすぎぬ。
それで、
だいたいうまくいく。
窓辺は人気だ。
日当たりは、
早い者勝ち。
だが、
長く居座ると、
無言の圧が来る。
皿の順番、
水の場所、
寝る位置。
すべてに、
言葉なきルールがある。
破れば、
空気が変わる。
守れば、
何も起きない。
何も起きないことが、
最も良い状態である。
人間は、
仲良くすることを
求める。
だが、
猫は知っている。
仲良くするより、
無理をしない方が長く続く。
近すぎず、
遠すぎず。
必要な時だけ、
そっと寄る。
それが、
猫の共同生活である。
吾輩は猫である。
中心には立たぬ。
だが、
どこにも居場所がある。
社会とは、
全員が無理なく居られる
配置のことである。
寄らぬほど
ちょうど良き距離
春の猫