吾輩は猫である。名はまだないが、最近ニュースで「AIM」という言葉を耳にするようになった。
アドバンスト・イノベーション・モビリティ――実に舌を噛みそうな名だが、どうやら人間たちが未来へ向けて“何かすごいこと”を始めるらしい。
AI、半導体、ロボット、空飛ぶクルマ――
まるでおもちゃ箱をひっくり返したような政策が語られている。
吾輩にしてみれば、空は鳥のもの、走るのは犬のもの、そして未来は誰のものでもない。
飼い主は「AIで日本が変わるんやって」と言いながら、スマホの音声認識に「ちがう、それちゃう」と怒っていた。
どうやら人間は、まだ“自分の声”すら、機械に伝えるのに苦労しているようだ。
イノベーションとは、吾輩に言わせれば「昨日より美味いカリカリが出てくること」である。
制度でも戦略でもなく、日々の暮らしにそっと染み込むものだ。
AIMが成功すれば、経済も暮らしも豊かになるという。
ならば、まずは猫のトイレ掃除ロボを実用化してくれぬか?
あるいは「鳴き声翻訳機」でもいい。吾輩もそろそろ、本音を喋ってみたい時がある。
未来とは 見上げるよりも 足元に
人間よ、空飛ぶ夢も良いが、まずはその足元にいる猫の声に、少しだけ耳を傾けてみるがよい。