吾輩は猫である。名前はまだない。
最近、少しだけ動きが鈍い。
食欲はあるが、
昼寝の時間が長くなった。
人間は、それに気づいたらしい。
ある朝、
天井の白い箱が開かれた。
脚立、雑巾、
そして「今日は掃除だな」という声。
どうやら、
エアコンの清掃である。
風は、
見えぬうちに溜まる。
埃、湿気、
そして季節の疲れ。
それらは、
人より先に、
猫の体に表れる。
吾輩は、
冷たい風が苦手だ。
だが、
澱んだ風はもっと苦手である。
人間は言う。
「猫のためにもな」と。
それは、
なかなか正しい。
フィルターが洗われ、
乾かされ、
箱は元の姿に戻る。
吹き出す風は、
尖らず、匂わず、
ただ静かだ。
掃除とは、
快適さのためだけではない。
誰かの不調に、
気づいた結果なのだ。
吾輩は猫である。
今日も直接は手を出さぬ。
だが、
風の変化で、
人の気遣いはわかる。
体調とは、
環境の返事である。
風変えて
猫の寝息も
深くなる