吾輩は猫である。
名前はまだない。
外が、
やけに良い匂いだ。
煙が上がり、
人間の動きが少し陽気になる。
人間はこれを、
BBQと呼ぶ。
肉が焼け、
音が弾け、
会話が増える。
火の前では、
人は少し素直になるらしい。
吾輩は、
少し距離を取って座る。
近づけば熱い。
遠すぎれば届かぬ。
このあたりが、
ちょうどよい。
肉は魅力的だ。
だが、
焦げた匂いと
塩の気配が強い。
猫は、
素材を好む。
人間は、
焼きすぎる。
だがそれも、
楽しみの一つなのだろう。
役割が分かれる。
焼く者、
食べる者、
片付ける者。
火を囲むと、
自然に配置が決まる。
吾輩は、
どれにも属さぬ。
ただ、
様子を見る。
やがて、
日が落ち、
火は弱まり、
声も落ち着く。
残るのは、
少しの炭と、
満ちた空気だ。
吾輩は猫である。
焼かぬし、
焦らぬ。
だが、
火を囲む時間の温かさは知っている。
BBQとは、
食べることより、
同じ火を囲むことなのだ。
火を囲み
肉より先に
心焼く