吾輩は猫である。名はまだない。
だがAmazonとヤマトの段ボールは嗅ぎ分けられる。
朝、ピンポーンと鳴るチャイム。
人間は小走りに玄関へ向かうが、
吾輩はもうその時点で準備している。
箱の中に入る気満々である。
「中身より、箱に反応するってどういうこと?」
人間はよくそう言う。
だが、理解していない。
ダンボールは要塞であり、寝床であり、戦場である。
ダンボール 猫にとっての 四畳半
まず、音がいい。
薄くこすれば爪が鳴き、
跳ねれば低く響く。
中に入れば、孤独と安心が混ざりあう。
吾輩にとって、
この世で最も“自分だけの場所”に近いものが、
新品の段ボールである。
そして、忘れてはならぬのが
「ちょっと小さい箱に無理やり入る悦び」。
この世界には、フィットすることでしか
得られない自尊心というものがある。
飼い主がため息をつく。
「また壊された…まだ中身出してないのに」
ふむ、それは気の毒だが、
そなたの管理より、吾輩の探求が先である。
段ボールは日々やってくる。
ときにギフトのように、
ときに生活の副産物として。
でもどんな形でも、
そこに猫が入り込めば――
それはもう、ただの箱ではないのだ。