吾輩は猫である。名はまだない。
最近、飼い主がパソコンに向かい、
「ChatGTPに聞いてみよ」とつぶやくことが増えた。
ChatGTPとは、人間の疑問に答える人工知能らしい。
しかし、どうもこのGTP、
――どこか惜しいのだ。
飼い主が「今日の献立教えて」と打てば、
「あなたの名前はカツ丼です」と返し、
「仕事の相談をしたい」と言えば、
「まず深呼吸してニャーと鳴きましょう」と返す。
ふむ……
そのアドバイスは、猫界では正しいが、
人間界ではどうだろうか。
とはいえ、飼い主は楽しそうだった。
笑ったり、突っ込んだり、
まるで友達に話しかけるようにGTPと会話をしている。
吾輩はひざの上で聞き耳を立てながら思った。
――もしかすると、AIとは
完璧な回答を求めるものではなく、
“誰かとつながる相手”なのかもしれぬ。
夜、飼い主が言った。
「こんなに変な返事でも、なんだか癒されるな」
吾輩は喉を鳴らした。
それは吾輩がずっとやってきた役割でもあるからだ。
吾輩は猫である。名はまだない。
だが、もしこのGTPとやらが
飼い主の心を軽くしてくれるなら……
吾輩は静かに隣に座り、その様子を見守ろう。
AIより 膝のぬくもり まさるなり