吾輩は猫である。名はまだない。
吾輩は家猫だ。
雨の日も、暑い日も、
屋根と毛布と決まった皿がある。
夜は鍵のかかる扉の向こうで、
静かに眠る。
ある日、窓の外に猫がいた。
首輪はなく、
耳に小さな切れ込みがある。
――地域猫である。
彼は塀の上から吾輩を見て言った。
「ここ、あったかそうだな。」
吾輩は答えた。
「そっちは、風の匂いがするな。」
彼の暮らしには、
決まった時間も、
決まった寝床もない。
だが、
通りの人が餌を置き、
誰かがそっと見守っている。
吾輩の暮らしには、
外の自由はないが、
病院も、
心配する声も、
帰る場所もある。
どちらが幸せか、
簡単には決められない。
ただ、
それぞれに守られている形が違うだけだ。
冬日差し 箱に集まる 命かな