【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―クリスマスイブ 編―

2025年12月24日

吾輩は猫である ―クリスマスイブ 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

今夜は、家の中がいつもと少し違う。
窓辺には小さな灯り、
部屋には甘い匂いが漂い、
外からは鈴の音が聞こえてくる。
――どうやら、クリスマスイブらしい。

飼い主は慌ただしくも楽しそうだ。
ケーキを切り、
チキンを温め、
ときどき吾輩の頭を撫でながら、
「もうすぐだよ」と独り言を言っている。

吾輩はツリーの下に座り、
揺れるオーナメントを眺めていた。
光は派手だが、どこか控えめで、
闇を押しのけるのではなく、
そっと寄り添っているように見える。

夜が深まると、飼い主はソファに腰を下ろし、
吾輩を呼んだ。
吾輩は当然のように膝に乗る。
外は寒い。
世界にはいろいろなことがあるだろう。
だが、この瞬間だけは、確かに平和だ。

飼い主が小さく言った。
「今年も、ありがとうね。」
吾輩は返事の代わりに、
静かに喉を鳴らした。

クリスマスイブとは、
誰かに贈る日であると同時に、
誰かがそばにいることを確かめる夜なのだろう。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、このぬくもりの中で思う。
――今夜、奇跡はもう起きている。

灯ともり 膝に集まる 聖夜かな


スポンサーリンク

  • この記事を書いた人

gonta

-【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編