吾輩は猫である。
名前はまだない。
春の終わりに、
一つの結果が届く。
紙の上には、
短い評価。
人間はこれを、
技術士口頭試験の結果と呼ぶ。
合格という二文字は、
遠くない場所にある。
番号も、
ほんの少し違うだけだ。
隣の列には、
同じ数字が並ぶ。
1602E0029。
その人は、
合格した。
吾輩は思う。
たった一文字が、
重い。
EとM。
それだけの違いで、
春の色が少し変わる。
机の上には、
筆記試験の記憶。
書いた時間、
積み重ねた経験、
考えた答え。
それらは、
消えない。
だが、
評価には丸と印が並ぶ。
コミュニケーション。
リーダーシップ。
技術者倫理。
継続研鑽。
技術の試験でありながら、
問われたのは
人としての姿勢だった。
悔しさは、
静かだ。
怒りではない。
諦めでもない。
ただ、
自分の背中を
もう一度見つめる時間。
技術士とは、
知識の頂ではない。
社会の中で、
どう立つかという
姿勢の名だ。
ならば、
今日の不合格は、
否定ではない。
問いが、
残っただけだ。
吾輩は猫である。
結果には驚かぬ。
だが、
続ける者の背中は知っている。
技術士とは、
合格の瞬間よりも、
その後の歩き方で決まる。
あと一歩
春の風だけ
先に行く