吾輩、信虎である。
昨日から右の奥歯がうずく。
カリカリを噛むとき、少し力を入れられない。
飼い主に見つかり、今日は動物病院の歯科へ行くことになった。
葵は心配そうに言う。
「信虎兄さま、麻酔って怖くない?」
獅子丸は面白がって、
「銀歯にしてもらえよ!かっこいいぞ!」と笑う。
沙羅は冷静に、
「歯は一度悪くすると全身に響くのよ。しっかり治してらっしゃい」と背中を押してくれた。
病院に着くと、白衣の先生が口を開けて診る。
「軽い歯肉炎ですね、スケーリングで大丈夫ですよ」
その言葉に少し安心した。
超音波の機械がキーンと鳴り、
歯石がカリカリと削られていく。
少しムズムズするが、痛みはない。
終わると、歯が見違えるほど白くなった。
先生は「猫も歯が命です。できれば毎日歯磨きを」と言う。
吾輩はうなずきつつ、
(歯磨きは…できれば週一にしてほしい)と心でつぶやく。
帰宅すると、3匹が出迎えた。
獅子丸がニヤリと笑い、
「お、ピカピカじゃん。鏡代わりにしてもいい?」
葵は「よかったね」と頬をすり寄せ、
沙羅は「これであと10年は美味しく食べられるわね」と微笑んだ。
吾輩は信虎である。
歯が健康であれば、猫生の楽しみは何倍にもなると、
今日しみじみ思ったのである。