【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫の皮膚炎 編―

2025年12月10日

吾輩は猫である ―猫の皮膚炎 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

最近、どうにも体がむずむずする。
しっぽの付け根あたりをかくと、
毛がふわりと抜け、赤くなっているではないか。
これは……ただ事ではない。

飼い主が気づき、眉をしかめた。
「ちょっと、これは皮膚炎かも」
その声に、吾輩は胸がぎゅっと縮んだ。
病院――あの独特の消毒の匂いと機械の音が頭をよぎる。

しかし、連れていかれた獣医殿はやさしかった。
丁寧に毛をかき分け、
「大丈夫ですよ、軽い炎症です。
 薬を塗ればすぐ良くなります」と言った。

飼い主は熱心に説明を聞き、
吾輩の背をそっと撫でた。
その手つきは、不安をほどく薬より効いた。

家に帰ると、
塗り薬をぬりぬり、
抗ヒスタミンの匂いがふわりと立つ。
吾輩は最初こそ逃げ回ったが、
数日たつと赤みもかゆみも薄れ、
毛並みがまた元のように整ってきた。

飼い主がほっと息をついた。
「良かった……。気づくのが遅れなくて」
吾輩は胸を張った。
心配をかけた分、今日はたくさん喉を鳴らして返そう。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが思う。
病はひとりで闘うものではなく、
寄り添ってくれる誰かがいれば、必ず軽くなる。

かゆみ去り 毛並みの春が 戻りけり


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gonta

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