吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ―いい夫婦―

2025年11月25日

吾輩は猫である ―いい夫婦―

吾輩は猫である。名はまだない。

家の中には二人の声がある。
朝はトーストの香り、夜は湯気の立つ味噌汁。
同じ屋根の下、同じ時間をゆっくりと分け合って生きる――
それが、この家の“いい夫婦”という姿らしい。

喧嘩もする。
飼い主の片方がむすっとして、
もう片方が黙って洗い物をしていることもある。
吾輩はその間をそっと歩き、
気まずい空気を毛づくろいの音でほぐす。
やがてどちらかが、
「ごめん」と小さく呟く。それで終わる。

互いに譲り合うでもなく、
かといって離れすぎることもない。
ふたりの距離は、
こたつの中で足が触れたときのような、
あたたかい曖昧さでできている。

夜になると、吾輩の寝床の横で、
二人が並んでテレビを見ながら笑っている。
吾輩はそのひざの間に入り込み、
安心という名の布団にくるまれる。

「この子がいると、家が明るくなるね」
そう二人が言うとき、吾輩は思う。
――いい夫婦とは、
自分以外の誰かの幸せを自然に考えられる者たちのことだ、と。

吾輩は猫である。名はまだない。
けれど、ふたりの真ん中にいると、
世界は少し広く、少し優しく見える。

寄り添えば 家路に灯る 春あかり


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gonta

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