吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ―猫と火災 編―

2025年11月27日

吾輩は猫である ―猫と火災 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

その夜は、いつもより暖房の匂いが濃かった。
飼い主が鍋を火にかけたまま、
うとうとしてしまったのだろう。

最初に気づいたのは吾輩だった。
鼻の奥を刺すような焦げ臭さ。
部屋の隅で揺れるオレンジの影。
――炎である。

吾輩は飼い主の布団に飛び乗り、
顔を前足で叩くようにして起こした。
「ん……どうしたの?」
次の瞬間、飼い主も火の気配に気づき、
目が一気に覚めた。

「火事だ!」
その声は震えていた。
だが、動きは素早かった。
窓を開け、ブレーカーを落とし、
吾輩をキャリーに入れて逃げ道を確保する。

外の冷気に触れたとき、
吾輩もようやく震えが走った。
火の赤は恐ろしい。
だが、飼い主の手の温度は、もっと強かった。

消火器を持った近所の人たちが駆けつけ、
火は大事に至らずに消えた。
煙の向こうで揺れる光が、
まるで命の境界線のように思えた。

飼い主は吾輩を抱きしめ、
「助けてくれてありがとう」と呟いた。
吾輩は喉を鳴らした。
恐ろしさのあとに残るのは、
守りたいという思いだけだった。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、危機の夜ほど、
小さな命たちは強くつながるものだ。

炎去りて 寄り添う胸に 春灯る


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gonta

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