吾輩は猫である。名はまだない。
吾輩の居場所は、
床でも、膝でも、棚の上でもない。
今日は肩である。
人の肩は不安定だ。
少し動けば揺れ、
呼吸で上下する。
だが、その揺れが心地よい。
世界が少し高くなり、
音が遠ざかる。
肩に乗るには条件がある。
焦らぬこと。
急に立ち上がらぬこと。
そして、
信頼を裏切らぬこと。
飼い主は動きを抑え、
声を低くする。
吾輩は爪を立てず、
体重を分散させる。
これは共演だ。
人はよく言う。
「重くない?」
吾輩は思う。
重さとは、
体重のことではない。
預けられるかどうか、
その一点だ。
肩の上から見る景色は、
判断が早い。
逃げ道が見え、
来客の匂いも先に分かる。
だが吾輩は、
見張りのために乗っているわけではない。
ただ、
ここが静かだからだ。
吾輩は猫である。名はまだない。
だが肩に乗るとき、
人は人で、
猫は猫で、
ちょうどよい距離になる。
肩の上
預ける重さ
信頼分