【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―初詣、二礼二拍手一礼が気になる猫 編―

2026年1月8日

吾輩は猫である ―初詣、二礼二拍手一礼が気になる猫 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

初詣に来た。
人々は皆、同じ動きをしている。
前へ進み、立ち止まり、
深く頭を下げ、
手を打ち、
もう一度、頭を下げる。

――二礼二拍手一礼。
どうにも気になる。

吾輩は飼い主の足元で、
その一連の所作をじっと観察していた。
なぜ二回なのか。
なぜ拍手なのか。
なぜ最後に、もう一度なのか。

猫の世界には、
こうした決まった型はない。
挨拶は匂いで確認し、
信頼は距離で測り、
感謝は喉を鳴らして伝える。

だが、人間たちは違うらしい。
所作をそろえることで、
気持ちを整えているように見える。
二礼で、日常を下ろし、
二拍手で、自分の存在を知らせ、
一礼で、願いをそっと置いていく。

吾輩は理解した。
これは神への挨拶というより、
自分自身への合図なのだ。

「今年も、ちゃんと生きるぞ。」
そう言っているように見えた。

飼い主が手を打つと、
乾いた音が境内に響いた。
吾輩はその余韻の中で、
しっぽを一度だけ揺らした。
――猫式の拍手である。

参拝を終え、
飼い主は満足そうに息をついた。
吾輩は思った。
型があるからこそ、
心は自由になれることもあるのだな、と。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが来年もきっと、
この所作を不思議そうに眺めているだろう。

二礼して 拍手の先に 年ひらく


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gonta

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