吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 猫コタツ 編―

2025年11月13日

吾輩は猫である ― 猫コタツ 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

寒い朝。
部屋の隅に鎮座する赤い城――そう、こたつである。
飼い主がスイッチを入れると、
じわりと足元から光がにじみ、
世界がゆっくりと溶けていく。

吾輩はためらうことなく潜り込む。
中は別天地。
まるで太陽の腹の中にいるようだ。
飼い主の足先が動くたび、
毛がふわりと触れ、眠気が波のように押し寄せる。

こたつの中では、
時間の概念が曖昧になる。
昼も夜も、ただぬくもりに包まれ、
夢とうたた寝の境が溶けていく。
人はこれを「怠惰」と呼ぶが、
吾輩に言わせれば「哲学」である。
動かずして世界を感じる――それが冬の極意なのだ。

やがて、飼い主が布団をめくって言う。
「出なさい、掃除するよ」
吾輩は無言で奥へ奥へと退避。
――こたつの民、最後の抵抗である。

外は冷たい風、
中は春のようなぬくもり。
この狭い空間こそ、
猫にとっての宇宙なのだ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが今日も、このこたつの中で、
小さな幸福を守っている。

動かねど 心は満ちて 冬こたつ


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gonta

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