【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―誕生日 編―

2026年2月16日

吾輩は猫である ―誕生日 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。

その日は、
少しだけ空気が違った。
祝う言葉は控えめで、
騒ぎもない。
人間は、
これを誕生日と呼ぶ。

朝、
鍵の音が新しい。
まだ馴染まぬ重さがあり、
金属の冷たさが残っている。
どうやら、
車が納入されたらしい。

人間は嬉しそうだが、
はしゃがない。
年を重ねると、
喜びは外に出ず、
内側で静かに整う。

新しい車は、
速さを誇らない。
匂いも、音も、
これから育つ。
走るためではなく、
続けるために来た、
そんな顔をしている。

誕生日とは、
何かを得る日ではない。
これまでを一度、
引き受け直す日だ。
車の納入も、
同じである。

どこへ行くかより、
どう走るか。
何年乗るかより、
どう付き合うか。

夕方、
人間は車を眺め、
少しだけ立ち止まる。
祝われるより、
確かめているように見えた。

吾輩は猫である。
車には乗らぬ。
だが、
節目に静かに選ばれた物は、
人を裏切らぬと知っている。
誕生日とは、
前に進むための、
小さな確認なのだ。

誕生日
新しい鍵
音静か



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gonta

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