【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―串焼き 編―

2025年12月28日

吾輩は猫である ―串焼き 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

夕暮れどき、街角から漂ってきた。
炭の匂い、脂のはぜる音、
そして、なぜか心を急かす香ばしさ。
――串焼きである。

赤提灯の下、人間たちは立ち止まり、
串を片手に語り合っている。
ねぎま、皮、つくね。
一本ずつ、丁寧に焼かれ、
一瞬で消えていく。
儚いが、満足げな顔が残る。

吾輩は少し離れた場所で座り、
その光景を眺めていた。
肉は食べられぬ。
塩分も強すぎる。
だが、匂いだけで
胸が満たされることがあるのを、
吾輩は知っている。

焼き手が串を返すたび、
炎がふっと立ち上がる。
その瞬間、
人間たちは黙り、
焼け具合を見守る。
――待つことも、
ごちそうの一部なのだ。

やがて飼い主が帰ってきた。
服に、串焼きの残り香をまとって。
吾輩は足元にすり寄り、
その匂いを確かめた。
「今日はね、ちょっと一杯やってきた」
そう言って、頭を撫でられる。

吾輩は思った。
串焼きとは、
腹を満たすためだけではない。
一日の終わりを、
きちんと終わらせる儀式なのだと。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、この香ばしい夜の空気の中で、
人間のささやかな幸せを理解した気がする。

炭の香や 一日ほどける 夜の串


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gonta

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