吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 猫の靴 編―

2025年10月5日

吾輩は猫である ― 猫の靴 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

ある日、飼い主が小さな箱を持ち帰った。
中から出てきたのは――吾輩用の「猫の靴」なるもの。
肉球を守るためだと説明されたが、
吾輩にしてみれば唐突な試練であった。

片足を通されただけで、
地面の感触が消え、ひげの先までむず痒い。
四足すべてを履かされたときには、
歩くたびにカタカタ音がして、
吾輩はまるで不器用な人形のようであった。

飼い主は「かわいい!」と声を上げ、
写真を撮りたくて仕方がないらしい。
だが吾輩は心の中で嘆く。
「猫の誇りは爪と肉球にあり。
靴など要らぬ!」

もっとも、灼けたアスファルトや雪の日には、
この靴も悪くないのかもしれぬ。
人間が吾輩を思って用意してくれたことだけは、
素直に受け止めておこう。

吾輩は猫である。名はまだない。
今日もぎこちなく靴を鳴らし、
通りを歩く姿を見せつけている。
まるで舞台役者のように――。

肉球に 靴も似合えば 夏の道


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gonta

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