吾輩は猫である。
名前はまだない。
春になると、
人間は急に「侍」を名乗り始める。
刀ではなく、
バットを握り、
国の名を背負って球を追う。
人間はこれを、
侍ジャパンと呼ぶ。
なるほど。
侍とは、
強く振るう者ではない。
最後まで立つ者である。
もし猫が侍ジャパンに入るなら、
守備は任せてほしい。
打球への反応、
低い重心、
跳躍力。
内野守備など、
猫の得意分野だ。
ただし、
問題が一つある。
ボールが止まると、
つい触る。
転がると、
つい追う。
審判の目の前でも、
本能は止まらぬ。
それでも、
侍という言葉には、
少し敬意がある。
勝つために戦うより、
負けても背筋を伸ばすこと。
それが、
本当の侍かもしれぬ。
試合は終わり、
歓声は静かに消える。
残るのは、
勝敗よりも、
グラウンドに残った足跡だ。
吾輩は猫である。
侍にはならぬ。
だが、
転がる球を追う心は、
世界中の猫で同じである。
球追えば
侍も猫も
ただ無心