吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ―猫好きさん大集合 編―

2025年11月16日

吾輩は猫である ―猫好きさん大集合 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

今日、商店街の広場で「猫好きさん大集合」のイベントが開かれた。
飼い主が嬉しそうに吾輩をキャリーに入れ、
「今日は君が主役だよ」と言った。
――ふむ、主役ならば堂々と行こう。

広場には、実に多くの猫と人間。
長毛、短毛、まん丸、スリム、
鳴き声も毛並みも、それぞれに個性が光る。
けれど、みんなの目がやさしい。
「かわいいね」「ふわふわだね」――
その言葉が風にのって、
まるで春の花びらのように舞っていた。

猫を抱く手、カメラを構える目、
笑う声、子どもの驚き。
どれも吾輩にとっては、
“人の心がほころぶ瞬間”そのものだった。

飼い主がブースのひとつで言った。
「猫がつなぐ縁って不思議ね」
吾輩はごろごろと喉を鳴らす。
確かに、人間同士の言葉より、
猫の一瞥のほうが、心を近づけることがある。

夕方、イベントが終わるころ、
空はオレンジに染まり、
会場には「また来年もね」という声が響いた。
吾輩は少し誇らしい気持ちで、
キャリーの中から世界を見つめた。

吾輩は猫である。名はまだない。
けれど、今日ほど“愛される”という言葉の意味を
感じた日はない。

集う手に ぬくもり宿る 春の風


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gonta

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