吾輩は猫である。名はまだない。
だが今朝のニュースで、人間が「脳にチップを埋めた」と聞いて、思わず耳がぴくりと動いた。
ニューロリンクというらしい。
脳の信号を読み取り、文字を打ち、記憶に触れ、ついには心までつなぐという。
ふむ、便利なようで、どこかぞっとする話である。
飼い主は言った。
「猫にチップを埋めて、気持ちが読めたらいいのになぁ」
とんでもない。
吾輩がちゅ~るをねだったふりをして、実は温かい膝を確保したいだけだとか――
そんな“戦略”が全部バレてしまうではないか。
それに、猫という生き物は、言葉にならぬ“間”で生きている。
しっぽの揺れ、耳の角度、寝返りひとつで心は伝わる。
チップなどという“人間の物差し”で測られたくはないのだ。
だが、もし本当に猫にもニューロリンクが埋め込まれたら。
世界はどうなるか?
・人類が初めて「寝たい」としか言わぬ知的生命体と接続し、混乱
・ねこじゃらしに脳内バグを起こす科学者たち
・「ごはん」「ねむい」「さわるな」しか出力されず、開発中止
考える 自由すらも 囲われて
便利さの裏にある檻(おり)を、猫は本能で察する。
だから吾輩は今日も、Wi-Fiよりもまどろみを選ぶ。