吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 猫の日常 編―

2025年11月7日

吾輩は猫である ― 猫の日常 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

朝、陽が障子を透かして部屋に差し込む。
飼い主の目覚ましが鳴るより早く、
吾輩は窓辺で背伸びをする。
世界は今日も、ゆっくりと動き始める。

朝食はいつものカリカリ。
味も形も変わらない。
だが、いつも通りにあるということは、
案外すばらしいことなのだ。

午前は日なたで寝る。
午後は陰で寝る。
夕方は、飼い主の足元で寝る。
人間はそれを「ぐうたら」と呼ぶが、
吾輩にとっては「生きる訓練」である。
――変化に動じず、風に身をゆだねる術なのだ。

夜になると、飼い主が帰ってくる。
手を洗い、服をかけ、
「今日も疲れた」と言いながら、
吾輩の背を撫でる。
その手が少し冷たい。
吾輩は喉を鳴らし、
“おかえり”の代わりに小さく体を押しつける。

変わらぬ毎日。
だが、それこそが、いちばんの幸福かもしれぬ。

吾輩は猫である。名はまだない。
けれど今日もまた、静かに息づく世界の中で、
ひとつの命として生きている。

変わらねど 光は日々に 新しき


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gonta

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