【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―お米券 編―

2025年12月3日

吾輩は猫である ―お米券 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

ある日、飼い主が引き出しを整理していたときのことだ。
ぽん、と机の上に小さな黄色い封筒が置かれた。
「わあ、お米券だ!」と飼い主が声を上げた。

吾輩は首をかしげた。
――米なら、いつも袋で買っているではないか。
なぜ紙切れひとつで喜ぶのか。

飼い主は、吾輩の疑問を読んだかのように語り出した。
「昔はね、お祝いとか贈り物とかに“お米券”をよくもらったんだよ。
 今でも使えるし、なんだか懐かしくて嬉しいんだよね。」

ふむ……なるほど。
人には、物そのものよりも、
そこに添えられた“気持ち”が価値になることがある。
吾輩がカリカリより飼い主の膝を選ぶ夜があるように。

飼い主は嬉しそうに封筒を抱え、
「今度、ちょっと良いお米買おうか」と言った。
吾輩は尻尾をふり、心の中で密かに願った。
――できれば鮭も一緒に買ってほしい、と。

夜、炊き上がった湯気の向こうから漂う香りは、
たしかに、どこか温かかった。
家族の記憶がよみがえるような匂いだ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが思う。
小さな紙の一枚にも、
人の暮らしの温度が染みているのだな、と。

紙一枚 思い出ふわり 炊きあがる


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gonta

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