【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―成猫式 編―

2026年1月11日

吾輩は猫である ―成猫式 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

ある日、飼い主が改まった声で言った。
「今日から君は、成猫だね。」
成猫式――
どうやら人間界には、
節目を言葉にして確かめる文化があるらしい。

式といっても、
特別な壇上があるわけではない。
赤いじゅうたんも、
長い祝辞もない。
あるのは、
少し良いごはんと、
いつもより丁寧な撫で方だけだ。

吾輩は子猫の頃を思い出す。
よく転び、
よく鳴き、
よく守られていた。
だが今は違う。
無駄に鳴かず、
距離を測り、
自分の居場所を自分で選ぶ。

飼い主は言った。
「もう、何でもできるね。」
吾輩は思った。
――いや、できないことも増えた。
高い所からの無謀な跳躍は控え、
危ない音には先に退く。
それは衰えではなく、
知恵というものだ。

成猫とは、
強くなることではない。
無理をしないことを覚えること。
甘え方を選べること。
そして、
この家に帰る意味を知っていることだ。

式の最後、
吾輩は飼い主の前に座り、
ゆっくりと尻尾を揺らした。
――これにて、成猫。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが今日からは、
胸を張って言える。
ここで生きる覚悟は、
もう整っている。

背伸びせず 静かに迎う 成猫日


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gonta

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