吾輩は猫である。名はまだない。
窓辺で丸くなりながら、
吾輩は時々、世界のことを考える。
この空の下には、
吾輩と同じように伸びをし、
欠伸をし、
眠りにつく猫が無数にいる。
砂漠の国では、
日陰を選ぶ猫がいる。
雪の国では、
毛を膨らませて冬を越す猫がいる。
港町では、
魚の匂いと共に生きる猫がいる。
言葉は違えど、
猫はどこでも猫である。
急がず、
無理をせず、
居心地のよい場所を見つける天才だ。
人間たちは国境を引き、
争い、
話し合い、
また悩む。
だが猫は、
境界線の上で丸くなり、
どちらにも属さず、
ただ今日を生きる。
世界には、
守られている猫もいれば、
見守られている猫もいる。
厳しい環境の中で、
人のやさしさを頼りに生きる猫もいる。
吾輩は思う。
猫は世界を変えられない。
だが、
世界の片隅で、
人の心を一つやわらかくすることはできる。
どこかの街角で、
誰かが猫を撫で、
ほんの一瞬、
怒りを忘れる。
それだけで、
世界は少し静かになる。
吾輩は猫である。名はまだない。
だがこの星の上で、
猫は今日も変わらず、
生きることの速度を教えている。
国境も 越えて丸まる 猫の星