吾輩は猫である。
名前はまだない。
街の音が、
少し違う。
遠くで低く響き、
近くでは
人の声が減る。
人間はこれを、
戦争と呼ぶ。
昨日まで開いていた店は、
半分閉じ、
灯りは早く消える。
空を見上げる時間が、
増えた。
猫は、
理由を知らぬ。
国も、
思想も、
境界線も持たない。
それでも、
変化はわかる。
餌は減り、
足音は急ぎ、
人の目には
余裕がない。
猫は、
静かに場所を変える。
危うい通りを避け、
安全な影を選ぶ。
生き延びるとは、
正しさよりも
柔らかさである。
人は戦い、
勝敗を語る。
だが、
瓦礫の上では
どちらの足跡も同じだ。
夜になると、
街はさらに静かになる。
風だけが、
壊れた壁を通る。
吾輩は猫である。
戦争はわからぬ。
だが、
平和の匂いは知っている。
静かな街ほど、
猫はよく眠るのだ。
静けさに
戻る街ほど
猫は寝る