【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―洗車後の足跡 編―

2026年3月2日

吾輩は猫である ―洗車後の足跡 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

午後、
車がやけに輝いている。
水滴は拭き取られ、
窓は曇りなく、
人間は満足げだ。

どうやら、
洗車をしたらしい。

本革も、
ボディも、
丁寧に整えられた。
光は均一で、
完璧に近い。

その夜、
空気はまだ温かい。
ボンネットは、
ほどよく心地よい。

吾輩は、
そっと乗る。

歩く。
止まる。
振り返る。

朝、
人間は気づく。
きれいな曲線の上に、
小さな足跡が並んでいる。

ため息。
しかし、
怒らない。

洗車とは、
汚れを消すことだ。
だが、
足跡は汚れではない。

それは、
誰かがそこに居た証。
磨き上げたものに、
生活が触れた瞬間である。

完璧な光沢は、
少しだけ無機質だ。
足跡があると、
急に物語が生まれる。

人間は、
また拭き取るだろう。
そしてまた、
吾輩は歩くだろう。

吾輩は猫である。
足跡を残す。
だが、
悪気はない。
美しさとは、
少しの乱れを含むものだからだ。

磨くほど
足跡ひとつ
愛おしき



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gonta

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