吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 新人歓迎編 ―

2025年6月17日

吾輩は猫である ― 新人歓迎編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。
だが今朝から、部屋の空気がどこかそわそわしている。
飼い主がエプロンを直しながら言った――「今日は新人歓迎ランチなのよ」

人間の世界では、新しくやってきた誰かを“歓迎”するらしい。
だが吾輩に言わせれば、猫の世界に歓迎などない。
来たければ来ればよい。
なじめなければ、そのまま去るのもまた自然だ。

とはいえ、吾輩の縄張りにも、若い猫がふらりと現れたことがある。
最初はフーと威嚇したが、
3日もすれば、彼が追い払ったカラスの恩を感じて、
黙って隣に並んで日向ぼっこをしていた。

つまり、“歓迎”とは言葉ではなく、
居場所をあけることなのかもしれぬ。

人間たちは会議室でお菓子を配り、
「うちは風通しのいい職場です」などと微笑むが、
本当に風が通っているかどうかは、
ドアの開き具合と、猫の通りやすさで決まる。

しっぽより 低く頭を 垂れて知る

歓迎とは、上下ではなく“間”をつくること。
吾輩は今日も、新人の足元に近づいて、
まずは軽く、においをひと嗅ぎする。

それが、猫なりの「ようこそ」である。


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gonta

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