吾輩は猫である。名はまだない。
このところ飼い主が、やたらとキーボードを叩いている。
聞けば「技術士試験の勉強中」だという。
しかも、相手は吾輩ではなく“チャットジーピーティー”?
「おぉ、これはいい切り口」「うーん、600文字におさまらん…」などと、
AIと真剣に対話している。まるで家庭内口述試験である。
吾輩は思った。
そこまでして“論理的に書け”というのか。
思いついたまま、のびのびと毛づくろいする吾輩には、到底理解できぬ世界だ。
だが、不思議なことが起きた。
飼い主が書いた文章を、AIが「この文脈では“具体例”を加えると効果的です」と返したとき――
飼い主の目が、ほんの少し光ったのである。
書く力は、思考の力。
言葉を問い返されることで、己の輪郭が少しずつ研がれていく。
AIは決して、答えを“くれる”わけではない。
ただ、鏡のように問いを“映す”のだ。
吾輩の目と、少し似ている。
試験より 思考を撫でて 合格へ
今日も飼い主は机に向かう。
吾輩はその足もとで静かに丸まる。
“黙ってそばにいる力”なら、AIより少しだけ上かもしれぬ。