吾輩は猫である。名前はまだない。
ある日、誰も決めぬうちに、
その席は空ではなくなっていた。
呼ばれたわけでも、
望んだわけでもない。
ただ、そこに座っていた。
それだけであった。
命じぬ。
叱らぬ。
声を荒らげることもない。
それでも、場は整う。
人は権威を言葉で飾り、
力を形にしたがる。
だが、真に重いものは、
動かぬことにある。
急がず、競わず、
昨日と同じ朝を迎える。
それを続けることの難しさを、
吾輩は知っている。
治めているのではない。
支配しているのでもない。
ただ、乱れぬ中心として、
在り続けているにすぎぬ。
変わらぬ姿は、
停滞ではない。
揺れぬ背中は、
拒絶ではない。
吾輩は猫である。
命令は出さぬ。
答えも示さぬ。
それでも、人は道を正す。
それが、
猫天皇という在り方である。吾輩は猫である。名はまだない。
何もせず
座る背中に
国がなる