吾輩は猫である。
名前はまだない。
春になると、
人間は急に野球を語り始める。
旗が増え、
声が大きくなり、
一球ごとに世界が揺れる。
人間はこれを、
WBC——
WORLD BASEBALL CATS……ではなく、
WORLD BASEBALL CLASSICと呼ぶ。
だが、
猫が出るなら話は別だ。
守備は強い。
打球への反応は速く、
ジャンプ力も申し分ない。
内野守備など、
猫に任せれば完璧だろう。
問題は、
ルールである。
ボールを見ると、
追う。
止まると、
触る。
転がると、
さらに追う。
戦術というより、
本能だ。
人間は、
勝敗を語る。
記録を並べ、
英雄を作る。
猫は、
ただ球を追う。
遠くへ飛べば嬉しく、
取れれば満足する。
勝つことは大事だ。
だが、
球を追う楽しさを忘れたら、
それはもう野球ではない。
歓声は夜まで続き、
街は少しだけ熱くなる。
テレビの前で、
人は同じ球を見る。
吾輩は猫である。
代表には選ばれぬ。
だが、
転がる球の魅力は知っている。
WORLD BASEBALL CATSとは、
世界中の猫が、
同じ球を追う大会なのだ。
世界でも
転がる球に
猫走る