吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― ヘアカット若返り編 ―

2025年7月4日

吾輩は猫である ― ヘアカット若返り編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、飼い主の“頭の色”が急に変わったことには気づいた。

「どや、若返ったやろ?」
そう言って、椅子の前でくるくる回る。
確かに、もっさりしていた髪はキリリと短くなり、
色も以前よりツヤがある。
なるほど、人間は毛の手入れで年齢を逆行できるらしい。

今回の仕上げは、例の店――QBハウスとのこと。
15分1400円、予約不要。
人間にとっては簡潔で便利、
だが猫にとっては秒速で毛が減る魔窟である。

「染めは別のところでやったけどな」
との補足。二段構えの若返り作戦、抜かりなし。

吾輩はじっと見上げる。
猫は歳を取っても“渋み”と言われるだけだが、
人間は、老いをリセットする儀式を持っている。
それは少し、うらやましくもある。

「どう? 10歳は若く見えるやろ?」
そう言って笑う飼い主に、吾輩は黙ってまばたき一つ。

毛を切り 鏡の中の 声も軽く

見た目が変わると、内側も変わるらしい。
そういえば、足取りもどこか軽くなっている。

猫にはQBも染髪もないが、
飼い主が嬉しそうならそれでいい。
今夜はひとつ、若返ったその膝の上で
甘えてみるとしよう。


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gonta

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